中村修人 / Nakamura Syuto

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Flute,Piano奏者の吉川真登と共作した「Kaleidoscope for a stray」リリース!

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吉川真登くんとの共作「Kaleidscope for a stray」を4月28日にリリースしました。
500円でボーナストラックも一曲入ってます。
下記からどうぞ。

nakamurasyuto.bandcamp.com

作業用BGMとして流しっぱも良し、目を閉じて没入して頂くも良しな実験的アンビエントでございます。
容量の都合で四分割しましたが実際にはひとつなぎの“40分1曲”ですので、是非ダウンロードしてシームレスにお楽しみ頂けたらと。
当記事ではこの作品について諸々書いていきとうござんす。
最後の方に吉川くんによる作品解説もあるので是非御一読下さい。

【共作者、吉川真登くん】

吉川くんはヤマハで講師も務めていらっしゃるフルート奏者です。
Ensemble SIGNALというユニットでも活動中。
俺がただの即興演奏狂だった10年以上前に出会い、以降ライブを一緒にやったりコラボして曲作ったりと何かと縁のある御方でございます。

 

【制作の切っ掛け】

そんな吉川くんから約一年前、急にラインが届きまして。
「お久し振りです。ご相談したいことがありますので近々会えませんか?」
なんだこの不吉な導入。
カネなら全くないし、変な宗教に勧誘されたら…。
用件は何かな?と聞いてみた返信がこちら。
「まあ、それはお会いしてからで。」
あ、これ絶対にカネか宗教ですね。
断り文句を考えつつ恐る恐る日程決めて一緒に飲み屋入ってみたら
Max/MSPを導入したいんですけどDAWは何がいいですかね?」
…うん…え?
「確か中村さん、ablton LiveとSONAR使ってましたよね。」
あ、はい。
「だから使用感とかいろいろ聞きたくて。」
あー、相談ってそういう…。
因みにMax/MSPっていうのは…説明が難しいのでwikiって下さい。
御存知ない方は“物凄く難しい音楽制作ソフト”とでもお考え頂ければ。
厳密には全然違いますが俺にも全容が分からないのでサーセン

当時の私は本格的にレコーディングを勉強しようとマイクやら何やら買い揃えている最中で使い倒せる機会が欲しかったため、吉川くんはMax/MSPを、俺はレコーディングや音質調整を、各々学べる重要な機会としてコラボしないかとお誘いしました。

その後は共に勉強、実験、会議を重ね、吉川くんが発案した“クリエイターやアーティストに刺激や閃きを与える音源作品”をコンセプトに掲げ本格的な制作がスタートしました。

【制作手順】

吉川くんはフルートとピアノ、俺はパーカッションとドラムを即興演奏して録音。
そのデータを吉川くんがMax/MSPを使用して作曲と編集。
更にそのデータを俺が音質調整して完成。
文字だとあっさりですが実際はそりゃあもう大変でした。
その苦労の甲斐あってなかなかに上質な作品になったと自負しております。

【Credit】

吉川真登 Yoshikawa Masato
(from Ensemble SIGNAL)
Flute,Piano,Max/MSP
Compose,Arrange,Mix

中村修人 Nakamura Syuto
(from usual name)
Percussion,Drum,Noise
Recording,Mix,Mastering

金子清美 Kaneko Kiyomi
Photograph

佐藤信一 Sato Shinichi
Recording

上記の通りレコーディングのアシスタントを佐藤信一さんに、
ジャケとデザインを金子清美さんにそれぞれお願いしました。
御両名、誠にありがとうございました。

【吉川くんによる作品解説】

昔、国語の先生から「聴」という字は耳と目と心を使う行為の象徴であるという、今でも強く心に残っている事柄を習い、当作品もその「聴」によって皆さんに認知されるものでありたいと願って制作致しました。

2年前にMax/MSPの存在を知り、中村さんに自慢するように試作を聴かせてから1年、この作品が産声を上げました。
購入する時には全く使いこなせず終わってしまうのではという恐怖もありましたが、この作品をリリースできた今、杞憂であったことをとても喜んでおります。

このMax/MSPは複数のパッチによってエフェクトやモジュールを構成します。
さながら数学のようであり積み木のようでもあります。
何でも出来るけど何も出来ない、そんな人間臭さを漂わせるツールなのです。

そんなツールでどんなパッチを組み立てよう、何が組み立てられるだろう、そんな好奇心と不安が入り混じった時間の中で「グリッチ」という時間の流れを操るような聴覚体験が出来る手法を選びました。
従来の音楽におけるグリッチはビート(拍動)があってこそのものでしたがそれに囚われないものを目指します。

この"Kaleidoscope for a stray"の心臓部分であるグリッチパッチを言葉で説明すると「過去2秒間の音を順再生、逆再生、再生速度をランダムに行うもの」です。
それがどういう音響効果を生み出すのか、まさに理科の実験そのものであり、そこから生まれた音響はまるで万華鏡のようでした。

まずピアノとフルート、いくつかの打楽器のサンプルを僕と中村さんで録音する。そしてそれらを持ち帰りこのパッチを通して音を出す。
それからDAWでひとつひとつ手作業で各音源を組み立ててゆく。
組み立てられた音たちはこのパッチによって順行する時間の流れと逆行する時間の流れを同時に聴覚体験に落とし込む、それがこの"Kaleidoscope for a stray"の正体です。

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f:id:nakamurasyuto:20200420134006p:plain現在の社会情勢の中、情報の渦に飲まれるような感覚を何度か体感しました。
SNSやネットワークで繋がっているからこそ何もかもから隔離された時間はとても貴重であると思います。
そしてこの作品は、周囲を隔絶する体験と環境を皆さんに提供することでしょう。

【というわけで】

買って下さい!よろしくお願い致します!